ラーメン屋とピザ屋

当時私が大学生のころ、ラーメン屋でアルバイトをしていました。そのお店では従業員はほとんど大学生のアルバイトで社員は2人でした。一日にアルバイトが8人程度、社員がどちらかか両方が出勤しているという状況です。私は皿洗い、ごはん類の盛り付け、お盆の準備など、もっぱら裏方の仕事でした。

注文を聞きに行ったりはほとんどが女性アルバイトの仕事です。それなりに広い店舗だったので、お客さんは土日ともなればかなりの数となります。一人のお客さんに時間をかけるというよりも、とにかく素早くさばいていくということが重要でした。私は人と接することが好きだったので、裏方よりももっとお客さんと直接対応できるような仕事がいいなと思っていました。ラーメン屋では、「いらっしゃいませ」と「ありがとうございました」ぐらいしかお客さんと話すことがありませんでしたので、正直物足りなかったです。とは言うものの、大学生でできる仕事はアルバイトでは限られますので、何でもできるわけではありません。

コンビニアルバイトも多数のお客さんを素早くさばく必要があるでしょうし、スーパーのレジ打ちもスピードが重要でしょう。自分のより理想に近いものは何かあるかと考えることがありました。特に探しまわったりはしませんでしたが、何気なくピザ屋さんのアルバイト募集の情報を知りました。ピザ屋さんと言えば、ピザをくるくる回転させてピザを作り、バイクに乗ってデリバリーをする、というイメージでした。お客さんの家まで配達して、そこでお金を受け取るという行為が、まさに1対1の接客になると思いました。

最終的には素早くさばく必要はあるのかもしれませんが、少なくともお客さんと面を向かって接客しなければいけない点については、前のラーメン屋とは明らかに違う点です。私はすぐさまピザ屋に面接を申し込み、アルバイトを始めることになりました。

仕事内容についての違いはやはり、1対1の接客ができるということです。ラーメン屋が裏方ということもありましたが、例え裏方でなくても、密度のある1対1の接客はあまりなかったと思います。しかしピザ屋は必然的に1対1になります。ピザメイクからお届けまでには必ずお待たせする時間が存在します。ラーメン屋より早く食事を提供することは不可能です。よって、お待たせしたことをお詫びすることがまずは重要になります。1対1の接客から学ぶことは大いにありました。だからピザ屋のオーナーも厳しかったのだと思います。例えばラーメン屋だと、子供用の小鉢を用意し忘れた場合、すぐに持っていけばどうにかなりますし、大事にはいたりません。しかし、ピザ屋の場合、コーラを入れ忘れたとします。そこから店舗に戻ってコーラを取りに行けば、当然ピザは冷めておいしくなくなりますし、配達時間も2倍以上になります。コーラを忘れたと店舗に電話したとき、オーナーからの第一声は「ドアホ!」でした。その後、近くのスーパーで買ってからお客様に渡せと言われます。ピザ屋のコーラはだいたい1リットルが多いですが、スーパーで買うと1.5リットルです。お客さんとしては得だったかもしれませんが、なぜ違うものかと思われると、お店の信用問題になりますので、正直に話します。これもオーナーからの指示です。 ピザ屋のアルバイトの前は、ピザを作り配達するだけと思っていたのですが、この単純な仕事の中にも気を付けるべきことがたくさんあり、一つのミスが多大な損失につながるのだと教えてくれました。当時じゃアルバイトの身ではありましたrが、オーナーの真剣さが本当に伝わりました。

今までアルバイトをしていたラーメン屋では、皿洗いだったりの裏方ばかりでしたが、ピザの配達は表舞台でと言えます。全く違う環境になりました。自分がお店の顔になるわけです。自分のミスがお店のミスになり、信用を失うことにもなります。仕事が変われば、気持ちも変えなければいけないと気付かされました。これは裏方では味わうことができなかった感覚だと思います。仕事を変えたときには今までとは違う何かを感じることがあります。そういう最初のころに感じた気持ちというのは時間と共に薄れていってしまうことがあります。しかし、この気持ちがどんなに年数が経ってもいつまでも持っておかなければいけないと思います。転職したばかりのそういう気持ちが仕事をうまくやっていくうえでの重要な要素になるのではないでしょうか。